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「落ち着きのない子」は、実は”エネルギー切れ”のサインかもしれません
2026.09.06
こんな方に読んでいただきたい内容です。
- 落ち着きがない・すぐ癇癪を起こすお子さんの対応に悩んでいる方
- 「叱る」「対応の工夫」を頑張っても、行動が繰り返し戻ってきてしまう方
- 発達支援や身体づくりに関わるお仕事をされている方
専門的に聞こえるかもしれませんが、できるだけかみ砕いてお伝えします。
行動は「反抗」ではなく「サイン」
診察や検査すらままならないほど、じっとしていられない子どもがいます。ソワソワし、どんどんテンションが上がり、最後は癇癪。保護者が体を押さえていないと座っていられないこともあります。
こういうとき、多くの現場では「もっと愛情をかけよう」「もっと声かけを工夫しよう」と、目に見える行動そのものに対応しようとします。でも、それだけではうまくいかないことがほとんどです。しばらくすると、また同じ行動が戻ってきてしまうからです。
臨床の現場でよく見えてくるのは、こうした強い調整不全のほとんどに、共通して「エネルギー産生の問題」が隠れているということです。脳が、落ち着きを保つだけの燃料を持てていない。だから、衝動的な反応や癇癪という形で表に出てしまう。エネルギーの産生を整えていくと、行動そのものが、しばしば劇的に落ち着いていきます。
これは「行動を直そう」とするアプローチとは、出発点がまったく違います。
実際、近年の研究では、脳の発達期は非常にエネルギー消費が大きく、細胞内でエネルギーを作る仕組み(ミトコンドリアの機能)にわずかな障害があるだけでも、発達の道筋に影響しうることが報告されています。ADHDや自閉スペクトラム症のあるお子さんで、このエネルギー産生の仕組みに違いが見られたという報告も増えてきています。「行動の背景にエネルギーの問題がある」という見方は、決して感覚だけの話ではなく、研究の裏付けが少しずつ厚くなってきている領域です。
見極めるポイントは「疲れやすさ」
では、どうやって見極めるのか。私が一番よく見ているのは、疲れやすさです。
少し負荷のかかることをやってもらい、どれくらいの早さで崩れるかを見ます。血中の酸素飽和度、顔が赤くなっていないか、作業の途中でコントロールを失っていないか。そうした様子を経時的に追いかけていくと、エネルギーの土台が本当に変わってきているかどうかが見えてきます。エネルギーが整ってくると、安定感が増し、衝動のコントロールが上がり、癇癪が減り、崩れるまでの時間が長くなっていきます。
ここは正直にお伝えしたいのですが、こうした「疲れやすさ」を臨床の現場で観察するという手法自体は、直接それを検証した研究がまだ十分にあるわけではありません。あくまで、臨床の中で積み重ねられてきた実践知として受け止めていただくのが正確です。
リハビリより先に、落ち着きが必要
ここで見落とされがちなのが、順番の話です。
反射や前庭系、眼球運動といった、いわゆるリハビリらしいトレーニングは、子どもが参加できるくらい落ち着いていなければ、そもそも意味のある形で行うことができません。落ち着くまでに1ヶ月、長ければ3ヶ月ほどかかることもあります。でもこれは、決して無駄な時間ではありません。土台をつくっている時間です。
ここで力を発揮する手段のひとつが、光を使ったアプローチ(フォトバイオモジュレーション、光療法)です。以前、あまりに疲れてソワソワし、保護者が体を押さえていないといけない状態のお子さんがいました。光を当てた後に落ち着き、パズルに取り組めるようになったのです。
このアプローチは、近赤外光や可視光が細胞内のミトコンドリアを刺激し、エネルギー産生を高めるという仕組みが報告されています。自閉スペクトラム症のお子さんを対象にした2024年の無作為化比較試験(30名、2〜6歳)では、8週間の光照射で症状評価スコアが平均7ポイント改善し、脳波にも変化が見られたと報告されています。
落ち着いた後の、リハビリの順番
エネルギーと落ち着きが整ってきたら、次は取り組む順番です。原始反射から始まり、感覚機能・粗大運動・姿勢やバランスと続き、微細運動・言語が積み重なり、最終的に認知機能や社交性といった、神経学的な発達の順序に則って、リハビリ(トレーニング)を行っていきます。
この順番を知っておくと、「今どのあたりにいるのか」を保護者にも正直に伝えられますし、あれもこれもと同時に手を出すのではなく、現実的なロードマップを描くことができます。ただ、この順序自体を裏付ける研究はまだ見つかっておらず、脳の構造と機能から考えられた理論である、という点についてはご留意ください。
まとめ
- 落ち着きのなさや癇癪は「反抗」ではなく、「脳のエネルギーが足りていないサイン」として読み替えられることが多い
- 行動そのものを直そうとする前に、エネルギー産生の状態を整えることが、結果的に一番の近道になる
- 落ち着くまでの時間は無駄ではなく、その後のリハビリが機能するための土台づくりの時間
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参考文献リスト
- “Energy metabolism in childhood neurodevelopmental disorders” — eBioMedicine / The Lancet (2021)
- “A systematic review on the role of mitochondrial dysfunction/disorders in neurodevelopmental disorders and psychiatric/behavioral disorders” — Frontiers in Psychiatry (2024)
- “Mitochondrial Dysfunction in Autism and Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder: Evidence from Genetic, Biochemical, and Neuroimaging Approaches” — MDPI (2024)
- “The Bitter Truth About Sugar and Willpower: The Limited Evidential Value of the Glucose Model of Ego Depletion” — PubMed 27485134 (2016)
- “Transcranial photobiomodulation in children aged 2–6 years: a randomized sham-controlled clinical trial…” — Frontiers in Neurology / PubMed 38737349 (2024)
- “Transcranial photobiomodulation for reducing symptoms of autism spectrum disorder…an open label study” — Frontiers in Child and Adolescent Psychiatry (2025)
- “Linear and Nonlinear Analyses of the Cardiac Autonomic Control in Children With Developmental Coordination Disorder” — PMC5874518
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